13/08/2025
ベアテが起草を手がけた詳細にわたる記述は、主に運営委員会・ケーディス大佐の反対で大半が削除された。ベアテはその時の思いについて「痛みを伴った悔しさが、私の全身を締め付け、それがいつしか涙に変わっていた」と表現していた。後には本人も「アメリカは、そもそも憲法上女性の権利や社会保障について規定していません。運営委員会の人たちは米国の弁護士で、しかもみな40歳以上の男性で、(人権条項を細かく規定した)欧州法など知らなかったのです」と冷静に分析している。
ベアテが考えた人権規定の精神は、現行憲法では第24条、第25条、第27条に生かされることになった。ベアテの草案の一部は、次の通り。
第19条
妊婦と幼児を持つ母親は国から保護される。必要な場合は、既婚未婚を問わず、国から援助を受けられる。非嫡出子は法的に差別を受けず、法的に認められた嫡出子同様に身体的、知的、社会的に成長することにおいて権利を持つ。
第20条
養子にする場合には、その夫と妻の合意なしで家族にすることはできない。養子になった子どもによって、家族の他の者たちが不利な立場になるような特別扱いをしてはならない。長子の権利は廃止する。
第21条
すべての子供は、生まれた環境にかかわらず均等にチャンスが与えられる。そのために、無料で万人共通の義務教育を、八年制の公立小学校を通じて与えられる。中級、それ以上の教育は、資格に合格した生徒は無料で受けることができる。学用品は無料である。国は才能ある生徒に対して援助することができる。
第24条
公立・私立を問わず、児童には、医療・歯科・眼科の治療を無料で受けられる。成長のために休暇と娯楽および適当な運動の機会が与えられる。
第25条
学齢の児童、並びに子供は、賃金のためにフルタイムの雇用をすることはできない。児童の搾取は、いかなる形であれ、これを禁止する。国際連合ならびに国際労働機関の基準によって、日本は最低賃金を満たさなければならない。
第26条
すべての日本の成人は、生活のために仕事につく権利がある。その人にあった仕事がなければ、その人の生活に必要な最低の生活保護が与えられる。女性はどのような職業にもつく権利を持つ。その権利には、政治的な地位につくことも含まれる。同じ仕事に対して、男性と同じ賃金を受ける権利がある。
現行憲法第24条の下敷きとなった草案全文は次のようになっていた。
第18条
家庭は、人類社会の基礎であり、その伝統はよきにつけ悪しきにつけ、国全体に浸透する。それ故、婚姻と家庭とは法の保護を受ける。婚姻と家庭とは、両性が法律的にも社会的にも平等であることは当然である。このような考えに基礎をおき、親の強制ではなく相互の合意にもとづき、かつ男性の支配ではなく両性の協力にもとづくべきことをここに定める。これらの原理に反する法律は廃止され、それにかわって配偶者の選択、財産権、相続、住居の選択、離婚並びに婚姻及び家庭に関するその他の事項を、個人の尊厳と両性の本質的平等の見地に立って定める法律が制定されるべきである。
憲法第14条一項(法の下の平等)草案もベアーテが起草している。
約10日間とう短い時間で、ベアテが起草したGHQ草案は全てが採用されなかったものの、現行憲法の14条、24条に活かされている。当時22歳の女性が描いた理想を、アメリカから押し付けられた憲法と単純に言い切っていいのか?それぞれで判断してみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=qdf_J2UxRNE
※ 動画は守屋浩の「二十四条知ってるかい」より
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